御曹司の愛され若奥様~24時間甘やかされてます~
事の発端!
そもそもの事の発端。
私の名前は結城 日和。二十三歳。
父はメガバンクの頭取を務めていて、裕福な家庭で生まれ育った私は、子供の頃から不自由のない生活を送ってきたと思う。
母は私が六歳の時に病気で他界。
兄一人、妹一人の三人兄妹で、たまに喧嘩はしてきたけれど、兄妹仲は良好だ。
鏑木と小宮山は、住み込みで働く使用人で、主に警備関係の仕事を任せている。
使用人はもう一人、仲西(なかにし)さんという五十代の女性もいて、教養には厳しいところもあるけれど、とても信頼出来る女性だ。
父はこれといって厳格ではなく……寧ろとてもわかりやすく溺愛されてきた。
だからこそ。突然こんな縁談を持ち掛けられたことに驚いてしまった。
半年前に大学を卒業した私は、父からの提案ですぐに就職はせず、家で花嫁修行という名の家事手伝いをしてきた。
その理由はよくわからなかったけれど、子供の頃から父の言うことに従っていれば間違いはなかったし、自分自身もそこに不満はなかった。
〝これは日和のためだから〟。
それが父の口癖。
だからこの花嫁修行もきっと、いつか来る私の幸せのためーーと思っていたのだけれど、そのいつかがこんなに早く来るなんて夢にも思わなかった。
勿論、父は初めからそのつもりだったのだ。そう思うと、大人しく花嫁修行なんかしていた自分にすら腹が立つ。
結婚の話を持ち掛けられたのは、まさに今日。
日曜日の昼下がり、買い物から帰ってきた私は、玄関で鏑木から「旦那様がお呼びですよ」と告げられる。