騎士団長のお気に召すまま
「突然の訪問であったのにお会いしてくださってありがとうございます」


それを見たミルフォード子爵は「顔をあげてください!」と慌てていたが、アメリアはシアンの姿をじっと見つめるしかできなかった。


シアンは騎士団長らしく軍服を身に纏っていた。

青藍の軍服には黄金のボタンと肩章がよく映える。付き人らしき人物とは異なり、団長である故かシアンは深い青色のマントを羽織っている。

その姿はまさに「青藍の騎士」そのものだ。

服装だけではない。共に遊んだ頃とは全く異なる高い背も、低い声も、穏やかな表情も、全てはあの頃と違う。

最もアメリアは幼き日のシアンをぼんやりとしか覚えていなかったが、それでもその面影が全くない。

じっとシアンの顔を見ていたアメリアに気づいたのか、シアンはアメリアに微笑みかけた。


「お久しぶりですね、アメリア嬢」


やさしい微笑みも、物腰の柔らかい口調も、それはそれは素敵な紳士だけれども、アメリアはなんだか寂しかった。

十数年前は「アメリア」と敬称抜きで呼んでくれていたはずなのにと思うと、時の流れと今の自分の立場を思い知らされるようでやはり苦しい。


「アメリア?」


なかなか挨拶を返せないでいたアメリアに、ミルフォード子爵は不振がって小声で呼ぶ。

その声で我に返ったのか、アメリアは慌てて「お久しぶりです、シアン様」と頭を下げた。


それからミルフォード子爵が「どうぞ、ゆっくりしていってください」とシアンを屋敷の中へ招き入れ、アメリアは久しぶりに屋敷の応接間に足を踏み入れた。
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