騎士団長のお気に召すまま
応接間に案内されたシアンはミルフォード子爵に促されてソファに腰を掛ける。

その後ろにはシアンの付き人が後ろ手に手を組んで厳しい顔をして立っていた。

シアンと向かい合うように座ったアメリアとミルフォード子爵は、もてなそうと紅茶や菓子をロイドに運ばせた。


「ああ、お構いなく…」


シアンはそう言うけれど、ミルフォード子爵は一生懸命になってもてなそうとしている。

久しぶりの来客、それも娘の許嫁であるシアン相手に、もてなさずにはいられなかったのだ。

そして紅茶が運ばれて良い香りがふうわり部屋に漂った頃、ミルフォード子爵は「いやはや」と汗を拭きながら言った。


「それにしても、お久しぶりですなあ、シアン殿」


「ええ、お久しぶりです、ミルフォード子爵」


「お元気そうでなによりです」とシアンはまた微笑むのだが、アメリアにはどうにも分からなかった。


なぜ、青の騎士団長のシアンが今になってこの家に訪れたのか。

何か理由があるはずだ、とシアンを見つめていたが何も答えはなかった。


「青の騎士団団長ともなれば、毎日お忙しいでしょう」

「国の平安のためですから」


しばらく当たり障りのない世間話を続けていた二人だったが、やがてミルフォード子爵が言った。


「それで、本日はどういった用件で?」


美しい所作で紅茶を口に含んだシアンは、それをそっと机の上に置くと微笑んだ。

まるで空気が変わったようにも感じられて、少し緊張が走る。



「ええ、今日は少しミルフォード子爵にお話があって参りました」


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