騎士団長のお気に召すまま
アメリアはただぼうっと団長室担当の仕事をこなしてきたわけではない。

第一目標はシアンとの婚約を掴むこと。しかしそれでも任された仕事をおざなりにはしていなかった。


それでもシアンはアメリアが調査に出ることについては納得できないようだった。

アメリアは団員とはいえ非戦闘員。事と次第によれば戦闘になることも考えられる。それを考慮するとどうしてもアメリアが調査に加わることを許可できなかったのだ。

しかしレオナルドが「いいじゃないか」と明るい声で言うからシアンは目を見開かずにはいられなかった。


「レオナルド!何を言って…」

「騎士の俺達じゃ見えないところが、アメリア嬢には見えるかもしれない。きっとそれは俺達にとって、騎士団にとって有益なものだ」

「しかし!」

「心配するのは分かる。だからアメリア嬢は必ずほかの団員と共に行動する。危険があればすぐにマリル基地へ逃げる。これでいいだろう?」


レオナルドの提案を聞いてもシアンの眉間の皺は元には戻らなかった。

しばらく考えたのちに、口を開いて一言「無茶はしないでくださいよ」とだけ言った。

それは許可に他ならない。

アメリアとレオナルドは目を見合わせて少し微笑んだ。


「貴女にひとつ託しましょう」


シアンは執務机の引き出しにしまわれていたペンダントを取り出した。

金色の細いチェーンに、青の騎士団の旗を模した小さな飾りがついた華奢なものだ。


「これは?」


「騎士団の者と示すものです。服の下にでもつけておいてください。

貴女は騎士団員ですが、非戦闘員。身分を示すものがなければ困る場合があるかもしれないので、その時のためのものです」

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