騎士団長のお気に召すまま
「あいつは相当怒り狂っていた。いや、憎しみそのものだな。

お前、キャンベル邸の夜会に出たんだろう。その場でアクレイド伯爵家から縁切りされたらしいな。

そのせいで他の家もキャンベル伯爵家から遠ざかって没落の可能性があると。

アメリア・ミルフォード。お前がいなければと言っていた。

遠くに売り飛ばしてしまえと」


アメリアは目を見開いた。

まさかそんなことになっているとは思いもしなかったのだ。

確かに貴族の社会は厳しい。一度の失敗で取り返しがつかなくなることもある。アメリアの家がそうだったように。

けれど伯爵家として有名なあのキャンベル伯爵家が没落などとても考えられなかったのだ。


驚きのあまり何も言えないでいるアメリアに追い打ちをかけるようにエディは罵る。


「何か言えよ、お前は人の人生を踏みにじってんだよ!」


ぐさり、ぐさりと容赦なくアメリアの心をえぐる。


「お前のせいでみんなが迷惑してんだよ、失ってんだよ!」

「まあ、それまでにしてくださいよ、エディ」


刺すような冷たい瞳にエディは押し黙る。

それから彼はアメリアに柔らかい声で話しかけた。


「さて、手荒な真似をしました。

私達はフォルストの者です。

あなたに聞きたいことがあります」


エディではない男性が腰を落としてアメリアに問う。

フォルストの者だと名乗った男性の胸元には、確かにフォルストの国旗が描かれていた。

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