騎士団長のお気に召すまま
「貴女が騎士団と行動を共にしているのをこのエディは見たと言っていました。あなたは騎士団の関係者ですか?」
「……」
なんて答えるのが正解か分からず黙るアメリアに、エディは怒鳴る。
「答えろよ、女!」
突き飛ばされたアメリアは倒れこむ。
縛られて身動きが取れないこともあって、全身が痛いと悲鳴を上げている。今まで擦り傷ひとつ作ったことがないのに、あちこちに打ち身の跡と擦り傷が見えてじくじくと痛む。
これを両親が見たら何て言うだろうか、とアメリアはぼんやりと思った。
シアンが見ても、溜息を吐き出すかもしれない。
結婚前の貴族の令嬢がこんなに傷をつくるなんて何事ですか、とかなんとか小言を言われそうだ。そう想像するとこの状況でも笑みがこぼれる。
さっきからシアンのことばかり思っている自分がいることにアメリアは気付く。
(ああ、いつの間にこんなに想うようになっていたのだろう。あんなに嫌な奴なのに。)
「シアン様…」
肩で息をしながらその名前を口にする。声は掠れていた。
「女性に対する暴力は反対ですよ、エディ。それに、これは…」
フォルストの役人はアメリアの首元のペンダントの存在に気付いたらしかった。
「青の騎士団の旗…これは、ということは、貴女はまさか」
彼が目を見開いたその時だった。
「その娘にそれ以上触らないでください」
その声が聞こえてきた瞬間、アメリアの視界は滲んだ。