騎士団長のお気に召すまま
「それは一体どういう意味です?」

「そのままの意味です。あなたが自分の仕事をこなせないために、他の団員達が困るなんてことはあってはなりませんから」

「つまり、私が仕事ができないから、皆さんに迷惑をかけていると?」

「昨日の仕事ぶりから判断するに、迷惑です」とシアンは頷いた。


「貴族の娘とはいえ、あまりにも飲み込みが遅いですね。教育係のジルも呆れかえっていましたよ。ここまで仕事のできない人材は、逆に探す方が難しいくらいです」

淡々と告げるシアンに、アメリアは堪忍できなかった。

いかにアメリアが仕事ができないとはいえ、昨日ここにやって来たばかりなのだ。そんな新入りに求めるものとしては、些か要求が高すぎる。

アメリアがそう告げると、シアンは資料を机に置いて「なにを言うかと思えば、正気ですか」と鋭い声で言われた。


「騎士団はこの国を守るためにある、国防の要です。国を守るために戦う騎士達を支えてくださる裏方の人々の仕事が、どれほど騎士達に影響をもたらすことか」


シアンは怒っている、とアメリアは思った。自分が怒らせてしまったのだ、と。


「騎士達がその実力を発揮するには、裏方の仕事が完璧でなければなりません。その妨げになるものがあれば、どんなことでも排除します」


口調も表情もあまり変わらないが、確実に怒っているのが分かる。シアンの目が、ゆらりゆらりと青く燃えているようなのだ。

アメリアは苛立っている気持ちも忘れて唾を飲み込んだ。
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