騎士団長のお気に召すまま
シアンはそこまで言うと、「本当なら、あなたの仕事ぶりからすると騎士団から追放してもいいくらいなのですが」と恐ろしいことを言って溜め息を吐いた。


「事情が事情ですし、世間知らずの貴族の娘であることを知った上で招き入れた責任もありますからね。多少は目を瞑りましょう。あなたがかける迷惑も、できる限り僕が引き受けます。ですので団員達には極力迷惑をかけないように働いてください」


その言い方では、まるでアメリアが迷惑をかけることが前提のようだ。何もそんな風に言わなくてもいいだろう、とアメリアが反論すると、言い切る前にシアンは強く言った。




「ここの長は僕です。


異論は認めません」




アメリアの目の前にいるのは、幼馴染みでもなく、元許嫁でもなかった。

確かな剣術の腕でその名を王国に轟かせる"青藍の騎士"。青の騎士団の厳格な団長である、シアン・アクレイド。


騎士団(ここ)では、彼が絶対。




「返事は?」




全ては彼のお気に召すまま。


それを思い知ったアメリアは、これ以上ないほどの屈辱を感じて拳を握りしめた。



「…はい」


絞り出すようなその返事に満足したらしいシアンは、机の上に置いた資料を手にとってまた目を通しはじめた。

アメリアは苛立たしくてシアンを睨みつけていた。


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