騎士団長のお気に召すまま


「本当に、なんて自分勝手な人なの」

団長室の隣の給湯室に戻ったアメリアは、食器を流し台に移しながら溜め息を吐く。

あんなにも自分勝手で性格の悪い人は今まで見たことがない。

苛立ちながら食器を洗っていると、部屋の外から「おい」と声をかけられた。

振り返るとそこにいたのは、騎士団員だろう年配の男性。

それはアメリアも見たことのある人物で、騎士団へ来た初日にアメリアを門前払いしたあの守衛のエディだった。

眉間に皺を寄せて憎むように睨みつけるエディに、アメリアは少し身構えながら「何でしょうか」と尋ねる。



「なぜここにいる」



その答えはエディ自身が知っているはずだとアメリアは思った。

団員であるならば、この御空色の服とエプロンを着てここにいることの意味など身に染みているだろう。

それでも尋ねるのはきっとアメリアに理由を言わせたいのだろうと考え、アメリアは真っ直ぐエディを見据えて言った。


「先日よりここで働くことになりました、アメリアです。今は団長室を担当しています」


するとエディが「嘘を吐くな」と目を見開いて吠えた。


「あんた、新入りだろう。新入りは団長室を担当できない!」

「確かにそうなのですが、団長命令で…」


目が血走っているエディを落ち着かせようとアメリアは必死になるが、その努力は報われない。

団長命令の言葉を聞いたエディは、「なるほど、そういうことか」となにやら納得した様子でアメリアを見据えた。


「お前、団長と繋がりがあるな。それで好待遇を受けているんだろう!」

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