騎士団長のお気に召すまま
元は子爵家だったアクレイド家が今や伯爵家となりその中でもいちばんに優位な立場にいるのも、全ては新当主であるアクレイド伯爵の手腕によるものと噂されている。
その弟君であるシアン・アクレイドも兄同様に頭が切れるというだけでなく、大変に見目麗しいお方なのだとか。年頃の令嬢方が恍惚の顔でそう何度も語っていた。
そんな輝かしいお方と没落寸前の自分が婚約関係にあるなど、普通は想像できまい。
「アクレイド伯爵のお父上と我が父上が一度仕事を共にしたときに、それはひどく意気投合されたようでね。お2人ともお年も近く、まだ互いの子どもも幼かったし、どうやら将来自分たちの子どもを結婚させようと許嫁にしたようなのよ」
アメリアの説明に、ロイドは「それは本当でございますか?」と絶句した。
ロイドがミルフォード家に執事としてやってきてから十年近くが経つものの、ロイドの落ち着きのなさは一向に治る気配がしない。アメリアはまた一つ溜息を零した。
「しかしお嬢様に許嫁がいらっしゃったとは知りませんでした。それも"あの"青藍の騎士だとは…。お嬢様はお会いしたことがおありなのですか?」
「幼い頃は、よく遊んでいたわ。お互いの屋敷を行き来していたの。兄上のアクレイド伯爵とも一緒にね」
あの頃は楽しかったなと思う。
まだ父も母も若くて、屋敷にもたくさんの使用人がいて。
夜会にも何度も参加していたし、毎日が輝いて見えた。
けれど、今は違う。
その弟君であるシアン・アクレイドも兄同様に頭が切れるというだけでなく、大変に見目麗しいお方なのだとか。年頃の令嬢方が恍惚の顔でそう何度も語っていた。
そんな輝かしいお方と没落寸前の自分が婚約関係にあるなど、普通は想像できまい。
「アクレイド伯爵のお父上と我が父上が一度仕事を共にしたときに、それはひどく意気投合されたようでね。お2人ともお年も近く、まだ互いの子どもも幼かったし、どうやら将来自分たちの子どもを結婚させようと許嫁にしたようなのよ」
アメリアの説明に、ロイドは「それは本当でございますか?」と絶句した。
ロイドがミルフォード家に執事としてやってきてから十年近くが経つものの、ロイドの落ち着きのなさは一向に治る気配がしない。アメリアはまた一つ溜息を零した。
「しかしお嬢様に許嫁がいらっしゃったとは知りませんでした。それも"あの"青藍の騎士だとは…。お嬢様はお会いしたことがおありなのですか?」
「幼い頃は、よく遊んでいたわ。お互いの屋敷を行き来していたの。兄上のアクレイド伯爵とも一緒にね」
あの頃は楽しかったなと思う。
まだ父も母も若くて、屋敷にもたくさんの使用人がいて。
夜会にも何度も参加していたし、毎日が輝いて見えた。
けれど、今は違う。