騎士団長のお気に召すまま
けれどシアンは鋭い目を彼らに向けた。

それはまるで氷のようだった。睨みつけられた男達が震えあがっている。


「何者だと、問いましたね。それはこちらの台詞です。

その娘をこんなところに連れ込んで、何をするつもりだったのですか」


剣先を鞘から抜いてはいないが、それでも剣を構える姿は鬼気迫るものがある。触れたら切れていまいそうなほどだった。


「お前に何の関係がある!黙ってろ!」


そう叫ぶ男の声を聞いたシアンは「そうですか」と意味深に呟くと、剣を振り上げた。

男達はシアンに立ち向かっていくが、シアンの敵には成り得なかった。

鋭いナイフを持つ男達がそれを振り上げてシアンに襲い掛かるが、それよりも先にシアンは鋭く剣を振り下ろす。

男達は叫び声をあげて次々に倒れていく。

そうして最後に残ったのはアメリアの腕をつかんでいる男だけだった。

男は焦っていた。

他の仲間がこうもあっさりやられてしまったことに、焦りを隠せなかった。


「クソ!」


そう叫ぶとアメリアの腕をぐいと引っ張って首に腕を回し、その喉元に隠し持っていた小型のナイフを突きつける。

アメリアは恐怖に目を見開いたが、シアンはいたって冷静だった。


「これ以上近づくんじゃねえ!」

「人質のつもりですか」


剣を下ろさないシアンに、男は「武器を捨てろ」と叫ぶ。


「もし武器を捨てなかったら、この女を刺すぞ!」


首に回された腕の力が強くなる。息が苦しい。

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