騎士団長のお気に召すまま
天幕街へ出たアメリア達はすぐにマリル基地へと向かった。

シアンの話を受けた団員達はすぐに武装して、アメリアが連れ込まれた路地裏へと走って行った。

彼らは基地の団員も目星をつけていた常習犯のようで、今回こうして捕まえることができて良かったと基地長は話してくれた。


「これで、奴らはもう悪さなんてできないでしょう」


安心したような表情を見せるシアンの横顔を、アメリアは少し胸を高鳴らせながら見つめていた。


「奴らは基地の団員に任せて、僕達は見回りを続けますよ」


基地を後にして、再び天幕街へ向かった。

路地裏の静けさとは対照的に天幕街は大変な賑わいを見せている。

けれどその中を歩いても、先ほどまでの寂しさや孤独感は感じなかった。

シアンの手の温もりがアメリアの心を満たしていた。

そんな雑踏の中で誰かが大きな声でシアンを呼び止めた。

顔を向けると、天幕で本屋の店主をしている年老いた男性がシアンに手招きしている。

シアンは会釈するとその男性のもとへ向かった。


「こんにちは、ご店主」

「やあ、団長さん」


店主はにこにこ微笑みながら挨拶を交わす。それから手を繋いでいるアメリアを見つけて、「こんにちは」と会釈した。

アメリアも挨拶を返すと、店主はシアンに「可愛らしいお嬢さんじゃのう」と微笑みかけた。


「あの、シアン、この方は?」

「彼は本屋のご店主です。僕達に情報を提供してくださいます」


それを聞いた店主は笑っていた。
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