騎士団長のお気に召すまま
ミアはきっとシアンのことを好いているのだろう。そしてそのシアンに近づく女性は誰であっても許さない。睨みつけるあの瞳がそうだと語っている。

そうであるならば、きっと自分は血祭りにあげられるに違いないと確信に近い予感がアメリアの全身を駆け抜けた。


「出たくないのはそうなのでしょうが、貴女は子爵家のご令嬢。伯爵家のミアの招待を断ることはできません。それくらい分かっているでしょう」


冷淡なシアンの言葉にアメリアはうなだれる。


分かっていたのだ、本当は。招待を断ることなど不可能だと。けれど万に一つの希望を胸に尋ねたというのに、あっけなく希望は打ち砕かれた。


「ミアどのは、私とシアン様が許嫁であることはご存知なのですか?」


はっとして尋ねるアメリアに、シアンは頷いた。



「知っています。ミアは僕の幼馴染です。僕とミルフォード子爵家のご令嬢が許嫁の関係であることも、今はアクレイド伯爵から許嫁の関係を解消するように言われていることも、全て昔から知っています」


アメリアは目を見開いた。

まさか全てを知られているとは思ってもいなかった。

ということは、きっとアメリアの今の状況も調べていることだろう。

全て分かった上でアメリアを夜会に招待したに違いない。


「そうであるなら、私は確実に生殺しかつるし上げられますね」


するとシアンは「でしょうね」と頷いた。


「最悪の場合、ミルフォード子爵家を貶めて再起不能にするかもしれません」

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