騎士団長のお気に召すまま
シアンの操るペンがさらさらと黒い影を連れて次々に文字の跡を残していく。
流れるように紙の上を羽ペンが走る音がまるで子守唄のように聞こえてきて、唐突にタンとペンが跳ねあがったかと思うと「副団長」と部屋の外に呼びかける。
「はいよ、団長。どうした?」
レオナルドは待っていたかのようにすぐに扉を開けて現れた。
「これをミア・キャンベルに届けてください」
ミア・キャンベルの名前を聞いたレオナルドは少し驚いたように目を見開いたがすぐに元の顔に戻ると「はいよ」と返事をした。
「珍しいな、お前があのミア嬢に手紙を出すなんて」
「少し用があるだけです」
「ふうん」とレオナルドは興味なさそうに頷くと、「伝令に頼んどくよ」と言って部屋を出ていく。
「お願いします」
シアンはそう言ったのだが、アメリアにはよく分からなかった。
「シアン様?」
アメリアが問いかけると、シアンは言った。
「僕もその夜会に出席します」
「えっ!?」
「ミアとは幼馴染ですから、夜会の招待状は僕にも届いていました。まあ、断るつもりでしたが。
それにミアのことです、僕が夜会に出るのも喜んで許してくれるでしょう」
ああ、こういうところだ、とアメリアは思った。
この男の腹が黒いところは、恋する乙女の気持ちもただ情報として処理して利用するところ。
「何より今、ミアに勝手に動かれては困ります。今度は貴女からではなくミアから婚約するように詰め寄られて、さらに厄介なことになるだけです」
流れるように紙の上を羽ペンが走る音がまるで子守唄のように聞こえてきて、唐突にタンとペンが跳ねあがったかと思うと「副団長」と部屋の外に呼びかける。
「はいよ、団長。どうした?」
レオナルドは待っていたかのようにすぐに扉を開けて現れた。
「これをミア・キャンベルに届けてください」
ミア・キャンベルの名前を聞いたレオナルドは少し驚いたように目を見開いたがすぐに元の顔に戻ると「はいよ」と返事をした。
「珍しいな、お前があのミア嬢に手紙を出すなんて」
「少し用があるだけです」
「ふうん」とレオナルドは興味なさそうに頷くと、「伝令に頼んどくよ」と言って部屋を出ていく。
「お願いします」
シアンはそう言ったのだが、アメリアにはよく分からなかった。
「シアン様?」
アメリアが問いかけると、シアンは言った。
「僕もその夜会に出席します」
「えっ!?」
「ミアとは幼馴染ですから、夜会の招待状は僕にも届いていました。まあ、断るつもりでしたが。
それにミアのことです、僕が夜会に出るのも喜んで許してくれるでしょう」
ああ、こういうところだ、とアメリアは思った。
この男の腹が黒いところは、恋する乙女の気持ちもただ情報として処理して利用するところ。
「何より今、ミアに勝手に動かれては困ります。今度は貴女からではなくミアから婚約するように詰め寄られて、さらに厄介なことになるだけです」