騎士団長のお気に召すまま
馬車に乗り込むと、ゆったりと動き出した。

シアンの屋敷は王都の郊外にあるらしく、騎士団の基地からは少し離れた場所にあるらしい。

しばらく揺られて移り変わる車窓の見ていると、不意に馬車は止まった。


「到着でございます」


馬車から降りたアメリアは呆気に取られた。

シアンは伯爵家の出身だ。アメリアの家よりはどんなにか素晴らしいものだろうとアメリアは思っていた。

思っていたのだが、シアンの屋敷はミルフォード家の比ではなかった。

あまりの広大さにアメリアは驚いて言葉を失った。


「アメリア様、屋敷の中へどうぞ」


馬車を運転してくれていた男性が遠慮がちにアメリアに声をかける。

その声でアメリアは我に返り「ありがとうございます」と品よく返事をした。


敷地の入り口から屋敷まで続く広大な庭には四季折々の植物が植えられているようで、溢れんばかりの色とりどりの花々が咲き誇っている。こんなに美しい景色があるのだろうかと、アメリアはまるで夢を見ているような感覚だった。

石畳のその道を進んでいくと、徐々に大きな建物が見えてきた。

レンガ造りの立派なお屋敷はやはりミルフォード家の数倍は大きな建物だった。窓の数から2階建てであることは分かったが、こんな広大な家では迷子になってしまうのではないかとアメリアは不安に思うほどだった。

< 77 / 148 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop