騎士団長のお気に召すまま
けれどそんなアメリア自身もぼうっとしている時間はなく、忙しなく身支度に追われていた。

あまり自分の容姿に関心を持たないアメリアだが、ばあやがいつになくはりきってしまっているために、衣装合わせから化粧まで慌ただしく飾り付けられていったのだ。


「お嬢様はお美しいままにお育ちになられましたねえ。奥様の若いときにそっくり」


ばあやはアメリアに化粧をしながら懐かしそうに言った。


「きっと大丈夫でございますよ。そんなに緊張なさらなくても、お嬢様のすてきなところはシアン様にも必ず伝わります」


鏡に向かってにっこり微笑むばあやには、アメリアの心の内などすっかりお見通しのようだった。

隠しているわけではないものの、ばあやにはいつも見透かされている、とアメリアは小さく笑った。


「ばあやにはかなわないわ」


するとばあやは「ほっほっほ」と高笑いして、「お嬢様がお生まれになる前からこの屋敷におりますからねえ」と得意げな顔をする。

そして準備が終わるころ、「シアン・アクレイド様のご到着です」とロイドが伝えてまわった。

その声を聞いてアメリアの緊張も高まって、けれどこのミルフォード子爵家を守るんだという強い決意に燃えていた。



そして間もなく顔を見合わせたかつての幼馴染み、青藍の騎士とも呼ばれるシアン・アクレイドが付き人と共に屋敷を訪れた。


「シアン殿、ようこそおいでくださいました」


ミルフォード子爵はハンカチで汗を拭きながら満面の笑みで会釈をする。

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