臆病でごめんね
「外田さん、ですね?袋は持っていく必要はありません。ご自分の仕事に戻って下さい」

「は、はい」


私はそう返答しつつ箱を元の位置に戻し、「失礼いたします」と断りを入れてからそそくさと部屋を出た。

廊下に置いておいた、様々な備品が積まれたワゴンを押しながら一番手前にある会議室に向かって歩き出す。


「外田さん」

目的地にたどり着き、ドアの鍵を開けようとしていると、後から付いて来ていたらしい副社長が声をかけてきたので条件反射的に振り向いた。

彼が先ほど言っていた通り、今日はフロアの際奥にある大会議室にて、この界隈に事務所を構える企業のお偉いさん方が一堂に会しての意見交換会がある。

だから彼がこちらに向かって歩いて来るのは当然のことなのだけれど。

「我が社の社員が失礼いたしました」

「え。い、いえ。そんな…」


だけどわざわざ立ち止まり、私の瞳をしっかりと見つめながら真摯に謝罪されてしまったので、大いに慌てふためいてしまった。


「副社長が悪いわけじゃないので…」

「いえ。社員教育が徹底されていなかったということですから、私にも責任の一端はあります」

そう断言した後、副社長は続けた。

「その点改善できるよう努めていきますので、どうかこれからもよろしくお願いいたします」

「は、はい」

「副社長」

そこで本丸さんがやんわりと会話に割り込む。
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