臆病でごめんね
「だから、そうじゃないって言ってるでしょ!」

だけど私の平穏は長続きしない。


「いつになったら機械の使い方覚えるのよっ。あなた、もうこの仕事を始めて3ヶ月以上も経ってるのよ!?」

「で、でも、あの…」

いけないと思いつつも私はついつい反論してしまった。


「これはローテーションで回ってくる業務だから毎日やってる訳ではないですし、他にも覚えなくちゃいけないことがたくさんあるから、次にやる時には忘れてしまっていて…」
「それでも普通ならすぐに使いこなせるわよ」

しかし先輩はバッサリと切り捨てる。

「現に私を含め、他のスタッフはそうなんだから。なんであなたはその都度知識がリセットされちゃうわけ?」


「あのぉ…」

するとその時、私達の後方から遠慮がちな声が聞こえてきた。

視線を向けると、部屋のドアを少しだけ開け、隙間から顔を覗かせている女性の姿が。

私は思わずドキリとした。

何故ならその人はいつも私にちょっかいをかけて来る、秘書課の女性の一人だったから。


「すみません。プロジェクター片付けたいんですけど、中に入っても良いですか?」

「あっ。失礼いたしました」

先輩は慌てて返答する。

ここは保管庫で、様々な備品が仕舞われているのであらゆる部署の社員が出入りするのである。

「どうぞ。お入り下さい」

言いながら先輩は通路の端に寄り、人が充分通れるスペースを空けた。
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