臆病でごめんね
「っていうか、『シュレッダーゴミ』って言ったんだからそっちの袋に決まってるじゃない。ちゃんと中身も見えてるんだから。そんな事いちいち説明されなくちゃ分からないの?だとしたら大問題よ。この数ヶ月一体何をしてたのかって…」
「そこまでで良いんじゃないのかな」


するとそこで突然、冷静で穏やかな男性の声が割り込んで来た。

かなり興奮していた女性はハッと我に返りつつ私の背後に目をやる。

「ふ、副社長…」


私もドキリとしつつ急いで振り向いた。

彼女の言葉通り、私の数歩先にある、開け放たれたドア付近に若宮公貴さんが立っていた。

そしてその隣には彼の秘書である本丸さんの姿も。


「落ち着いて。廊下まで声が聞こえて来ましたよ。今日は外部の方が大勢いらっしゃっているんですから。通りすがりに聞かれてしまう可能性もなきにしもあらずです」

「す、すみません」

「そもそもゴミはまとめた者が所定の場所まで持っていく決まりですよね?その先の処理はクリーンスタッフさんにお任せするとして、やるべき所まではきちんと自分でやりましょう。そして、本来の担当業務ではない上に、あなたの言葉が足りなくてこの方は思い違いをしてしまったのだから、皆が見ている前でそこまで責めなくても良いのではないですか?」

「……はい」

「ええと…」


そこで副社長は視線を動かし、私のネームプレートを確認してから言葉を繋いだ。
< 9 / 51 >

この作品をシェア

pagetop