【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
悪魔だと思った。
意識のない彼らを手加減なしで、それも無表情で躊躇(ちゅうちょ)なく蹴り続ける彼の姿を見て、恐怖で足が竦(すく)む。
違う。
こんなのが見たかったんじゃない。
私はただ蘭君を護りたかっただけで...
でも、なんで。
話し合いで解決、なんて...そんな甘い世界じゃないっていうの?
「やめ...っ」
「...」
「やめてよっ!!!!」
喉の奥を絞りすぎて、やっと出た大声は裏返っていた。
ーーーピタッと足を止めた蘭君が、こちらに顔を向けた。
怖い 怖い 怖い
無理だ
今、彼の顔を真っ直ぐ見る勇気が出ない。
ザッ...と、砂埃と靴の擦れる音で、蘭君が私の方に近づいてくることが、顔を背けてても分かった。