【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
器用に足先を使って伸びている男達を退かしながら
蘭君はポケットに入っていたさっき買ったアイスのお釣りを、私の目の前に落とした。
ーーーチャリンチャリン...。
落ちた小銭が私の前でクルクルと踊り出す。
「らっ...」
「タクシー代。それ持ってさっさと帰れよ」
「らんくっ...!」
「...名前、気安く呼んでんじゃねーよ...」
冷たくあしらわれた。
彼は私に背を向けて、マンションの光に溶け込んでいく。
ねえ、ちがうよ蘭君。
話を聞いてよ。
怖かった...怖かったの。
人を簡単に傷つける蘭君の姿が怖かっただけなの。
でも、だからって。
私のこの"気持ち"と、蘭君への想いは...まったく関係ないものなんだよ?
泣き始めの夏の夜。
伸びた男達の横で、涙をコンクリートに滲ませながら、ただただ泣いた。