【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
風邪引かれたら困るなんて...
少しでも心配されたことが、ものすごく嬉しくて。
寒いはずなのに、無駄に体が熱を帯びる。
蘭君が私を優しく地面に降ろした。
ポタポタと、濡れた制服から落ちる水滴が、草に水をやる。
「...悪かったな」
「...へ?」
「あの時、お前に当たっちまって。」
懐かしんでいいほど、前に起こった苦い出来事を、今更...ううん。今だから謝る蘭君。
あの時の蘭君、気絶してる不良相手に何回も蹴りを入れてたし、ものすごく怖かった。
だけど私は...蘭君と話せなかったこの何ヶ月もの間が1番怖かったよ。
それに喧嘩売ってきて蘭君をバカにしたのは相手の方だったし。
蘭君が怒った気持ちも分からなくもないんだ。
「...でもあれは...私も悪かったし...」
「ちげえよ...あれは俺のワガママだ。」
「それってどういう...意味?」
見つめあった時に生まれた、なんとも言えない感情が。
私を強くさせ、踏み込んではいけない蘭君の闇の中までズカズカと土足で侵入してしまう。
でも...今の蘭君に聞いても、大丈夫なような気がした。
だってこんなにも...
優しい顔をしているから。