【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
ほんとに...いたよね?
だってその証拠に、マフラーぐちゃぐちゃになってるもん。
もう、せっかく巻いたのに。また直さなきゃ。
首元を締めないように、慣れた手つきでマフラーを直そうとすると。
「おい、それ。歩夢のマフラーじゃねーか...?」
私の首元に巻かれてるマフラーを犬の尻尾を掴むみたいに
ーーーシュルと滑らかに奪い取る蘭君。
「あっ...!
せっかく巻き直そうとしたのに〜」
目でマフラーを追っかけて、蘭君から奪い返そうとするけど。
身長差で負けて、蘭君の手からマフラーが取れない。
そんな必死な私に目もくれず、蘭君はマフラーをまじまじと見る。
「...やっぱ歩夢がいつも使ってるやつじゃねーか。
そういえば3週間前に土手に居たときも、このマフラー巻いてたよな、お前」
「あっ、うん。
蘭君に会う前に歩夢さんに会ってたから...。
歩夢さん優しいから貸してくれて、その一週間後ぐらいに返しに行ったら"あげる"なんて言われちゃって...」
「...」
「さすがに悪いと思って返したんだけど...また首元に巻かれちゃって...。
結局貰っちゃったの」
「...バカ犬」
「えっ!?」
「お前は人から貰えれば、なんでも貰うのか。」
「別にそういうつもりじゃ...」