【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
人前で、しかもこんな大勢の前で、蘭君が絶対にしそうにない事をしてくるから
とりあえず、コップに入ってる水を飲んでうるさいくらいに鳴りっぱなしの鼓動を落ちかせた。
...ていうか
自分の嫌いなものを人にあげようとするなんて、蘭君って意外と可愛いところあるんだね。
嫌いな物押し付けられても、全然嬉しくないんだけど。
ーーーパク。
「どうだ、美味いか?」
「んー......酸っぱい」
口の中で弾けるトマトはきっと罠。
蘭君に『あーん』してもらえるなんて、きっとこの先無さそうだから...
食べてしまう私はやっぱりこの人の思惑通りな人間になってしまうんだ。
「...トマトも食べられないなんて、蘭君のガキ」
「ああ?お前もう一度言ってみろ」
「何回でも言ってやりますよーだ!!
ガキガキガキ!!」
「ほらよ彩羽ちゃん、そこまで言うなら全部食ってもらってもけっこうだぜ?」
「...むっ(卑怯だ)」
断れないこと分かってて、何度も何度もトマトの数だけ、あーんしてくる。
ムカつくし、トマトなんて気分じゃないのに。
「ハッ...可愛いとこあるじゃねーか、お前」
「んぐっ!?」
トマトの酸っぱさも甘く変えしまう、彼の不意打ちな言葉と笑顔で
結局私はいつもの様に顔がトマト色になってしまうのです。