【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
ふと窓の外を見ると、満月が雲と一緒に流れていくのが見えた。
真っ白になったお皿を見て、そろそろ帰る時間か...と。
帰る支度をしながら私がお手洗いに行ってる間に、蘭君はブランドものの財布を片手にお会計を済ませていた。
...そういえばこの人、金持ちだったんだっけ?
ファミレス...もしかして初めて入ったんじゃ...?
そんなわけ...ないよね?
「自分の分くらい自分で払えるのに...っ」
お店から出ると春だから当たり前、風は冷たくないし寧(むし)ろ気持ちがいいくらい。
だけど、ふと蘭君から貰ったマフラーを思い出して、首元が寂しくなった。
「ねえ蘭君!!ちょっと聞いてる!?
ハンバーグセット980円!!返す!!」
「あー...?いらねーよ、俺の奢りだ」
「でもさあ...」
「いいつってんだろ。
なんならお前が偉くなったら返せ」
「偉くって...なれるわけないじゃんか」
「なれねーから言ってんだろ、バカ」
「むっ...むかつく...」
この男は...どうしていつもいつも憎まれ口を叩くのか。
そんなひどい事ばっかり言ってると、いつか女の子に嫌われちゃうんだから...。
...まあ、それは絶対にありえない事だと思うけど。