【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
ふう...なんとか一命は取り留めた...。
離れていく蘭君の顔に勿体なさを感じたけど。
決して付き合ってるわけじゃないんだ...
いくら蘭君のことが好きだからって、二度目のキスは流されたくない。
だから、今度する時は私たちが恋人になってから...なーんって。
そんなこと絶対にあるはずない、と。
1人で勝手な妄想に浸っていたせいで気づかなかったんだ。
ーーー隣にいる蘭君の様子がおかしくなっていることに。
それに気づいたのは3秒後
そろそろ私の住んでるアパートに着きそうなのに、急に足を止める蘭君に違和感を感じた。
「...らんくん?」
「.....っ...ハァ...」
「ねえ蘭君...?どうしたの?大丈夫?」
額からは大量の汗
完全に正気じゃない、光を失った目。
目を見開きながら息を荒げ、なにかに取り憑かれたかのように、蘭君は一直線だけを見つめていた。
私も彼の目線の先を追って、何が起こっているのかを確かめるだけ... だったはずなのに。
後悔と一緒に絶句した。
だって
「ごめんなさい...っ!!
もうしないから!!お願い許して!!!!」
「なんでちゃんと盗んでこなかったんだ!!?
この役立たず!?
ただで家に住ませてやってんだ!それをタダ飯まで用意しろなんて甘えんなよ。
夕食ぐらい自分で用意しろよ!!」
「痛い...っ!!ごめんなさいごめんなさい!!
お父さんごめんなさいごめんなさい!!
今度はちゃんと盗んでくるから...っ」
「役に立たねー息子はいらねーんだよ!!
死んで詫びろ!!くそガキ」
ここは住宅地で、ものすごく声が響きやすいのに。
道のど真ん中で人目なんか気にせず、小太りの男の人が
何回も
何回も
何回も。
まだあどけなさ残る男の子のお腹を躊躇なく蹴っていた。