【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
そんな願いも虚しく
蘭君はどこまでも他人のフリをして、女の肩を乱暴に掴み、部屋の方にその長い脚を動かせる。
それがたまらなく寂しくて。
「行っちゃ...やだよ」
引き止める方法なんか、そんな器用なこと知らないから。
また溢れてくる涙は、私の弱さを買ってくた。
「そばにいてくれないと死んじゃう」
届いたらいいな...と、素直に吐いた言葉は
ピタリと、意外にも蘭君の足を止まらせた。
そしてこちらに振り向く彼は...
やっぱりどこまでも冷たい目をしている。
「テメェは俺がいないと死ぬのか?」
「...うん」
「本気で言ってるなら、お前はバカだ」
「...」
「俺が死んで困る奴なんかこの世に一人もいない」
「そんなこと...っ!」
ない、のに。
蘭君はその先の言葉を私に言わせないよう、唇で遮った。
「んっ...!?」
卑怯だ、卑怯だ、卑怯だ。
そんなやり方で黙らすなんて...蘭君はなにも分かってない。
私は蘭君が好き
ただそれだけで私の心を支配する蘭君がもっと好きだ。
だから...
特別じゃないと分かってるキスでも嬉しいのは...もう抜け出せないと分かってる永久迷路のような恋に溺れてるからなんだ。