【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
ここに来たことを後悔しても、今更逃げるという選択肢がないことくらい分かっているから、ビクビクしながらも恐る恐る顔を後ろに向けると。
「来ると思ったよ、彩羽ちゃん」
「...っ!?歩夢さん!!?」
サングラスにスーツ姿の歩夢さんが、柔らかい笑顔で立っていた。
「...なっ、なんで歩夢さんがここに?」
「話は後。
とりあえず、今はここを出ようか。
もうすぐ警察も来るし」
「け、警察?!」
「子供への虐待の件はもう解決したよ。」
「えっ!?」
驚きすぎて思わず大きな声で反応してしまった。
そんな私を見て歩夢さんがクスッと笑う。
「俺と未知で自首するように父親の方脅しといたから」
おっ、脅したって...
歩夢さんの口かそんな物騒な言葉が出てきたことに、またまた驚いてしまう。
「子供は別れた母親の方に引き取ってもらったよ。
まあ、あっちも子供に会いたがってたしね」
「えっ...それって」
「父親の方がお金に困らない生活してたから、親権は父親の方にあったけど、虐待のことがバレたからね...。」
「...」
「虐待の理由がね、”子供にお金を使うのは勿体ない”から、だって。
じゃあなんで子供なんか引き取ったんだよって話だよね」
「...」
そんなくだらない理由で、あの子は暴力を受けていたなんて...。
同じ人間として、ほんっと信じられない。
しかも自分の血を分けた子供なのに、もっと考えられない。
「心に深い傷は残ったけど、母親に抱きしめられて嬉しそうに笑ったあの子の顔を見てると、こっちまでウルッときちゃった。」
「あゆむさん...」
「これであの子も幸せに暮らせるよ、まあ一件落着ってとこかな?」
歩夢さんの話を聞いてもまだ完全に安心しきれていない私の身体は震えていた。
そんな私を安心させようと、サングラスを取ってニコッと笑ってくれる歩夢さんは、やっぱりどこまでも優しい...。
恐怖で動けない私の代わりに私の手を引いて、家の前に止まっている高級車に押し込んでくれた。
急展開すぎて頭が追いついてくれない。
でも...あの子、助かったんだ...。
なにはともあれ、本当によかった。