【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
人間というものはどこまでも儚い生き物だ。
暴力でしか人の心を支配することができない人間は、きっといい死に方はしないだろう...。
心の中で、少しだけ父さんを皮肉って俺は目を瞑った。
そしてそれから数ヶ月後。
俺の言葉通り、父さんはいい死に方はしなかった。
「...うそ、だろ?」
学校から帰ってきた俺を待っていたのは、火に包まれている家だった。
「父さん...っ!?
父さんは!?」
「危ないので下がってください!!」
「父さんは無事なのかよ...!!?」
「...」
「おい!!なんとか言えよ!!」
火の海に飛び込もうとする俺を、必死に止める消防士のおじさん。
あんなに酷い仕打ちを受けても、俺にはまだ父さんが必要だった。
火に包まれている俺の家を興味津々に見つめて、スマホでその光景を撮ってる馬鹿な奴らと、可哀想な目で見つめるだけの無力な奴ら。
なあ...なんでこうなんだよ。
俺、神様に恨まれるようなことでもしたのかよ。
なんで...っ
なんで俺ばっかこんな...っ!!!!
「あっ...あっ、は...あはははは!!!!」
狂ったように笑った。
今までこんなに笑いが止まらなかった日があったか?
燃えて崩れていく家。
そして火の海に溺れてしまった父。
火が消えた頃には、もうなにもかもなくなっていた。父の姿さえ...跡形もなく。
火事の原因は、タバコの不始末だったらしい。
タバコのすぐ側に置いてあった酒に火が着いて、それから一気に火が燃え広がったと警察に簡単に説明された。
でもそんな事はどうでもいい。
呆気ない父の死に、笑いしか出てこなかった。
ついに俺は...一人ぼっちになったんだ。