【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
現実味のない、息苦しい過去だった。
ポタリ、ポタリと。
額から汗が流れ落ちていくのも気づかないまま、歩夢さんが話してる蘭君の過去に開いた口が塞がらない。
悲惨すぎた。
本当に同じ世界を生きてる人間が体験していた現実なのか。
まるで夢を見てるみたいだ。
「...っ...」
「...大丈夫?彩羽ちゃん」
「...は...い...」
歩夢さんに渡されたハンカチを受け取って、構わず汗を拭いた。
蘭くんは、どれだけ辛い思いをして、今まで甘えることを我慢してきたんだろう...。
考えても考えても
その痛みを味わえない。
いやそんな地獄、私には絶対耐えられない。
「私なら...自殺しちゃうかも...」
「彩羽ちゃん...」
いつかは救われる、なんて綺麗事
今はなしだ。
だってそうでしょ?
大好きだった母親に裏切られて
その痛みを被せるように、父親には虐待を受けてたんだよ...?
やっぱり無理だよ...
そんなの生きてる意味...見つからないよ。