【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
不安げに蘭君を見つめる私に、「大丈夫だ」と髪の毛が乱れるくらい頭を撫でてくる蘭君。
そんなんで誤魔化されたりなんかしないもん...。
でも、私は蘭君の味方だから。
蘭君のやろうとしている事に、口は出さないよ。
「兄さんの方から、僕に会いに来てくれて嬉しいよ」
「できることなら俺はこの先一生お前に会いたくなかったけどな」
「...冷たいね、兄さん。
でっ?話って何」
なにかを決意したように、グッと私の手を握る蘭君が目を瞑る。
嫌味なほど殺風景な屋上で、静かに吹いた秋風が、蘭君の頬を撫でながら消えていく。
ーーーそして。
「あの女に...母さんに会わせろ」
息を呑む暇もないくらい、驚いた。
でも1番驚いてるのは鈴君だ。
だって、まさか本当に
蘭君がお母さんに会う決断をしてくれるなんて、思ってもみなかったから。
鈴君は力なくしてフェンスに背中を預ける。
蘭君は、真っ直ぐな瞳で矢を放つように鈴君だけを見ていた。