【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
*
「兄さん、心の準備はいい?」
放課後、鈴君と蘭君に挟まれながら歩く夕暮れの道は
歪な関係を真っ赤に染めて目立たせていた。
嫌な時間はすぐにやってきて、そこからが長い。
進めば必ず着いてしまう鈴君の家に...いや。
蘭君のトラウマの元に戻ってきてしまった。
「蘭君...」
「大丈夫だ、彩羽」
「...」
「大丈夫だから」
そう言って、長い脚で自ら踏み込む辛い世界は、一体これからなにを物語るのか。
鈴君が家の鍵を差し込んで、私達を家の中に入れてくれた。
「おじゃまします...」と、私は言うけど。
蘭君は口を閉じたまま、靴を脱いだ。
家族から他人になって、また家族になるって
どういう心境なんだろう...?
もし私が大好きなお母さんに捨てられたら
多分...もう生きていけない。
なのに蘭君はそんな母親を許そうとしてる。
やっぱり...理解できないよ。