【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
*
「ねえ、蘭君。
本当にこれでよかったの...?
後悔してない?」
あの歪な家から出て数分が経つ。
自分たちの住んでる場所とは反対方向に歩き出す私達は、ただ...彷徨いたいだけなんだ。
「後悔なんかするかよ。
あの女を見た瞬間確信したんだ。
もう...あいつへの未練はないと」
「...」
「あんなに大好きだった母親でも、裏切りという形で離れていったら、もう他人なんだよ」
「...私は離れていかないよ?」
「知ってる。
だからそばに置いてんだよ」
「鈴君は...蘭君のこと...」
「...なんだかんだで、1番あいつが可哀想な立ち位置にいるのかもな。
鈴はなんも悪くねーよ。
母さんの愛に振り回されてるだけだからな。
でも過去に囚われるのはもううんざりなんだ。
こんなに苦しんだんだから、少しの犠牲くらい許してくれよな、神様...」
「...蘭君が神頼みするなんて、変なの。
1番そういうの信じてなさそうなのに」
「人間は弱った時にしか神様に頼ろうとしないんだぜ?
神様って...ただの逃げ道なのかもな」
「...」