【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。
「着きました」
蘭君との2人だけの世界が終わりを告げるように。
前から聞こえてきた運転手さんの声で、一気に現実に戻された。
ゆっくりと黒塗りの車が停車。
車の自動ドアなんて、タクシーでしか見たことがなかったから。
急に開いたドアにビックリしながらも、車から降りた。
「...」
車から降りたはいいけど。
ここ、どこだろう...?
辺りを見渡しても、草と木しかない。
唯一建っている錆びた倉庫は、人なんか絶対に寄り付かなさそうな独特な雰囲気が放たれていた。
「なに、ヒビってんのお前?」
屈んで私の身長に合わせた蘭君に、顔を覗きこまれ。
不意打ちすぎて一瞬で心臓が粉々になりそうだった。
だって...
蘭君ってば、い...一応キスした仲なのに
そんなの忘れたみたいに顔を近づけてくるんだもん...。
ドキドキしすぎて死ぬかと思った。