ヘタレなボクが愛した人
ボクはありさちゃんの方に近づいた。

ホントは怖くて…震えてるけど、もし絡まれたら?

勝てる気しないし…

でも…ありさちゃんを守りたい…

勇気を出して声をあげてみた。

「あのぉ〜」って。そしたら、

「あっ!!REIYARのドラマーの…中原さん!オレ大ファンなんすよ〜」と一人の男性がボクに言ってきた。

「こんなところで、ビッグカップルに逢えるなんて、オレメッチャラッキー!」とその男性は喜んでいて。

ありさちゃんも絡まれてるとかではなく、単にファンに囲まれてるという感じだった。

とりあえず、良かった…

ナンパとかされてるんじゃなくて。

ボクらは丁寧にファンサービスをした後、

「邪魔してスイマセン」と言う彼らを見送った。

そしてボクらは顔を見合わせて笑いあった。

ゆっくり歩き始めた。今度はありさちゃんにペースを合わせようと様子を伺いながら。

そしたらありさちゃんと目があった。

そしておずおずと手を出された。

「えっ?」とボクが言うと、「もう、置いてかないでください?」って上目遣いで言ってきた。

これは…ボクと手を繋いでいいということ?

いいのかな?ホントに…

悩んでいると、ボクの手に自分の手を重ねられた。

ずっ…随分積極的な…

ボクは震えながらも、ありさちゃんの手を握り返した。

ありさちゃんは笑ってくれたので、少しホッとした。

改めて、ボクたちは歩き始めた。

ぎこちないけど…会話も少しずつする。

仕事の話をしたり…お姉ちゃんや、雪弥さんの話をしたりして。

ふと、「今日はどこに行くんですか?」ありさちゃんは聞いてきた。

「麗華水族館!」とボクが言うと、

嬉しそうに「ホント?私あそこメッチャ行きたかったんだぁ!」と言ってくれた。

良かった…嫌だとか言われたらどうしようとか思ってたし。

お姉ちゃん、さすがのセンス…

ボクたちは水族館の前につき手を離した。

ありさちゃんが写真を撮るって言ったから。

麗華水族館は確かにお姉ちゃんの言うとおり、外観からしてアートティックだった。

言葉を失うくらい美しい。

有名なデザイナーと建築家がタッグを組んでより美しいものをコンセプトに建てた水族館だと聞いた。

ボクも実は楽しみにしていた。

ありさちゃんの喜ぶ顔が見れることもだけど…美しく輝く内装は多分お姉ちゃんの創る服に近い気がしていたから。

ありさちゃんは…スマホで外観を連写していた。
< 16 / 41 >

この作品をシェア

pagetop