ヘタレなボクが愛した人
そんなボクを見てクスッと笑ったありさちゃんはボクのほっぺを指で押しながらゴメンね?と顔を覗き込んできた。

それがあまりにも可愛いので、ボクはすぐに許してしまった。

「さてと、そろそろいい時間になったわね!行きましょ!」とありさちゃんは言ってボクの手を引きながら歩き始めた。

何処に連れて行かれるのかと少しドキドキしながらボクは着いていく。

着いた場所は…大きな船の前だった。

え?どーゆうこと?!とボクが固まっていると、

「これに乗るのよ?ほら、早く!予約してあるって言ったでしょ?ディナークルージングよ!夜景を楽しみながら美味しいお食事がいただけるの!素敵でしょ?」とありさちゃんは言って目をキラキラ輝かせた。

なんて、演出…

ズルい、ボクだってそんなカッコいいことしたかったのに、ロマンチックな演出取られた…

けど、嬉しかった。

ボクらは船に乗り込んだ。

しばらくして船は出発した。

そして席に着いたボクたち、アナウンスが流れ、クラシカルな音楽が流れる。

耳に残るヴァイオリン、チェロ、弦楽器、打楽器、ピアノなどの楽器がそれぞれのハーモニーを邪魔し合うことなく奏でられていた。まさにオーケーストラを生で聞いているような錯覚さえ起こす。

思わず耳を澄ませて聞き入ってしまう。そこに混じり合う汽笛もまた異空間を演出していた。

出された食事は創作フレンチだった。

オシャレで雄大な海の上で夜景を眺めながら好きな人と食事をしている…

素敵すぎて、幸せ過ぎた。

けど、こんなところで何を話して言いかわからず、口数は減ってしまう。

それでも二人で過ごせるこの空間がいつまでも続いて欲しいと思った。

「そうだ!さっき貰ったプレゼント開けていい?」って改めて聞いて、ありさちゃんは鞄からプレゼントの箱を取り出した。

ドキドキしながらボクはそれを見守る。

蓋を開けた瞬間…

まばゆい光が優しくありさちゃんを包み込んだ。

「わぁぁ~スッゴク素敵ね!これブローチよね?」とありさちゃんの笑顔はブローチに負けない輝きを放ち、

ボクの理性を破壊させようとする。

「ありさちゃんにピッタリかなと思って…」と照れながらボクが言うと、

「…晴香さんのデザインね?」とありさちゃんは言う。

ボクは頷いた。

「やっぱり!こんなに繊細で美しいデザインのもの作れるの、晴香さんしか思い付かないもの!ありがとうね。大事にするね!」とありさちゃんはほんとに喜んでくれた。

「でも高かったでしょ…」とありさちゃんが言う。

「そんなことないよ。ボクがどーしても何かプレゼントしたくてこれを選んだんだから」とボクが言うと、

「私…何も用意してなくてごめんね」とほんとに申し訳なさそうな顔をするありさちゃん。

「大丈夫だよ!だってほら…こんな素敵な時間をボクにくれたでしょ?それだけで充分だよ!」とボクは笑った。

そして今なら言える気がしてボクは口を開いた。

「ありさちゃん、あのね…実は、ボクと結婚を前提にお付きあいして欲しいんだ。今までもこれからもずっと、ありさちゃんと色んなことをして供に歩いていきたい」とボクは勇気を持ってプロポーズに近い、告白をした。

「もちろんよ。ほんとはね、私も今日ここで言おうって考えてた。最近特に人気になっていくあなた見て、取られたくないって勝手に焦ってて…ありがとう!これからもよろしくね!」とありさちゃんは言ってくれた。

嬉しくて、ボクらはもう一度、乾杯した。

そしてお食事を終えたボクたちはデッキに上がる。

夜風が心地よく星空はボクらを歓迎してくれるように輝く。

二人で手を繋ぎそんな優雅な時間に浸っていると、いつの間にか、クルージングが重量級していて、ボクたちは船を降りた。

まだ余韻に浸りながらボクらは少し散歩する。

心配性の優からLINEが来た。

「楽しんでる?こっちは3人でホムパだよ」って写真つきで。

そんなボクのLINEを覗きこんだありさちゃんは

「もぉ、ほんと、優ったら!楽しそうね」と言いながら笑った。

「ボクたちも写真送ろっか」とボクは言って、手を顔の前で繋ぎ写真を撮った。

そして『楽しそうだな?こっちも最高の時間を過ごしてるよ』と添えて送った。

返事は早かった。スタンプ1つで返ってきた。

それ以上はなかった。

ボクたちはまだ帰りたくなくて、しばらく一緒にいた。

そして闇夜が深くなる頃、帰宅した。

ありさちゃんを家まで送り届け、ホムパしているお姉ちゃん宅へ

チャイムを鳴らすとだいぶ仕上がった雪也さんが出迎えてくれた。

「あれー?ありさちゃん一緒じゃないのぉ~」と珍しく舌ったらずな言い方だった。

「なんぼほど飲んだんですか?飲み過ぎですよ~」とボクが言って、中に入ると、更なる光景が!!

なんと、お姉ちゃんと優が腕を絡ませてビンごとお酒を飲んでいた。

そしてそのまま変な躍りを踊って。

ボクは言葉を失い呆然と立ち尽くす。

「おかえりぃ~」と声を揃える二人。

ただいまと言いながらボクは散らかった空き瓶を片付け、食べ残したものを片付けた。

状況を理解できないまま。

「どーゆうことか、説明してもらえませんか?」とボクが言うと、

「あなたたちのお祝いよ」とお姉ちゃん、

「意味わかんない」とボクが言うと、

「新しい仕事決まったんだ」と雪也さんが言った。

なるほど。そーゆうことか。

「良かったね。おめでとう」とお姉ちゃんは言ってくれた。

「ありがとう!」とボクは言った。


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