雪と断罪とそして、紅
「アリスちゃん?もしかして、アリスって藤邦アリス様?」
高校生は僕のしたことに驚きもせず、不思議そうにこてんと頭を傾げる。
藤邦アリスは確かに有名な人物だ。
知らない人がいないわけが無いのだが、この子は反応はただ知っているという反応ではない。
「君は誰……?」
今まで殺す相手の名前を聞いたことなんかない。
名前を聞かずに殺して、腹を裂いて、子宮を取り出して握り潰した。
それなのに、何で僕は名前を聞いたんだろうか?
「私?私は皆戸朱寧(ミナト アカネ)」
皆戸朱寧……?
藤邦には、アリスちゃんには何にも関係のない名前だ。
それに、世の中にはそっくりな人は三人はいるって言うしね。
さて、気を取り直して──。
「……今、アリス様に似てると思いました?」
その子は僕の心の中を読んだようにそう言った。