雪と断罪とそして、紅


「アリスちゃん?もしかして、アリスって藤邦アリス様?」





高校生は僕のしたことに驚きもせず、不思議そうにこてんと頭を傾げる。





藤邦アリスは確かに有名な人物だ。





知らない人がいないわけが無いのだが、この子は反応はただ知っているという反応ではない。





「君は誰……?」





今まで殺す相手の名前を聞いたことなんかない。





名前を聞かずに殺して、腹を裂いて、子宮を取り出して握り潰した。






それなのに、何で僕は名前を聞いたんだろうか?





「私?私は皆戸朱寧(ミナト アカネ)」





皆戸朱寧……?




藤邦には、アリスちゃんには何にも関係のない名前だ。






それに、世の中にはそっくりな人は三人はいるって言うしね。






さて、気を取り直して──。





「……今、アリス様に似てると思いました?」





その子は僕の心の中を読んだようにそう言った。








< 109 / 210 >

この作品をシェア

pagetop