雪と断罪とそして、紅
誰、その子……?
そう彼に問い質したいのに声が出ない。
「やだ!帰んない!」
「駄目だよ、アリスちゃん。それに、君が帰らないと僕まで三月様に叱られちゃうよ」
「え!?なら、帰る!アリスのせいでママにヒカリが怒られるのは駄目!」
女の子は抱っこをせがむように小さい手を彼に伸ばす。
ヒカリ……?
それが貴方の名前なの?
「抱っこ!」
「はいはい。まったく困ったお姫様だ」
彼は困ったように笑うと女の子を抱き上げて、こっちに向かってきた。
でも、彼はあたしに気付くことなく、横を通り過ぎていった。
何で……?
何で、貴方はそんな愛しそうな目でその子を見てるの?
彼は腕の中にいる女の子をいとおしそうに、穏やかな眼差しを向けていた。
あたしも、摂紀も律生も向けられたこと無い眼差しだった。
摂紀と律生は……あたしは……貴方の何だったの……?