雪と断罪とそして、紅
「何で……」
この子、僕の心を読めるの?
普段は動揺しない僕だけど、今はかなり動揺している。
そんな僕の反応に、皆戸朱寧は小さく笑った。
その笑みも何処かアリスちゃんに似ていて、更に僕を動揺させる。
「別に私は貴方の心が読めるわけじゃないですよ。ただ、人の心の変化に敏感なだけです」
そう言って、皆戸朱寧はナイフを握った僕の手に触れる。
そして、自らそのナイフを首へと当てる。
「私を殺すんですよね?良いですよ、殺して下さい」
何でこの子は死にたがる?
人は死に直面すると恐怖で、命乞いをする。
その恐怖を見るのが僕は好きなんだ。
絶望しながら死んでいく姿が見たいんだ。
「……殺す気が失せたよ」
僕はナイフを彼女から取り上げて、上着のポケットへとしまう。
そんな僕の姿を見て彼女は「良かった、殺されなくて」と笑った。
……死にたいのか生きたいのか分からない女……。
それが僕が抱いた彼女への印象だった。