雪と断罪とそして、紅
「──お母さん?」
摂紀に名前を呼ばれて我に返ると、いつの間に帰ってきたのかアパートの部屋に着いていた。
「摂紀、律生……」
「お母さん、どうしたの?」
摂紀の心配そうな眼差しが初めて会ったときの彼と姿が重なった。
あの時はあんなに優しかったのに……。
何で……何で何で何で何で何で何で何で──。
「何でなの!?」
気付けば、あたしは摂紀の頬を叩いていた。
声を荒上げたせいで律生は大声で泣いて、頬を叩かれた摂紀も目に涙を溜めていた。
泣きたいのはあたしだ……。
愛する人に素通りされ、愛する人との我が子に手を上げて……。
あたしはどうすればいいの?
そう自分に問い掛けるけど、返事はない。
それもそうだ。
何せ、あたしは──。
「うるさい!泣くな!」
もう自分を保てていなかったんだから──。