雪と断罪とそして、紅
──彼女にはいつも驚かされる。
「あ、和泉。お帰りー」
ソファーに横になって、肘置きに頭を乗せた彼女が部屋に入ってきた俺を見る。
「……アリスさん、少しは藤邦の令嬢である自覚を持たれてはいかがですか?」
ソファーに寝転がって肘置きに頭を乗せてるのはまだ多目に見る。
でも、さすがに足を広げているのは頂けない。
俺は床に散らばる紙を上手く避けながらソファーの彼女に近付くと、広げた足を閉じるようにその足を叩く。
「いったいなー。和真はそんなに暴力的じゃなかったよ」
抗議してくる彼女を睨もうとしたら、彼女の手元にある写真立てが目に入った。
「兄さんは貴女を甘やかしすぎたんです」
写真立てから視線を反らしてため息を吐くと、俺は荷物を置いて散らばった紙を拾い始める。
まったく大学の講義で疲れているというのに……。
俺は大学の講義が終わったあと、毎日のように大学の傍にある彼女が開く私立探偵事務所に寄っていた。
「ため息吐くくらいなら来なければ良いのに」
彼女はソファーから起き上がると、写真立てをテーブルに静かに置いた。