雪と断罪とそして、紅
──何であたしがあの男を愛したのかって?
さぁ、何でだろうね?
でも、あの頃のあたしは誰かに手を差し伸べて貰うのを待っていた。
仮にあの男じゃない男が差し伸べてきたらそれでも手を取っただろう。
だけど、あたしの前に現れて手を差し伸べたのは彼だった。
結局あの男が何者だったのかは分からない。
ただ、分かるのは最低な男だったっていうことだけ。
律生にあたしに毒を盛らせて殺すような最低で、最悪な男。
それでも、あたしは恨み言を言っていても心の何処かで最期まで彼を愛していた。
……いや、囚われて逃げれらなかった。
あの紅眼の麗人の眼差しから──。