雪と断罪とそして、紅
アリスさんは元々人体実験は反対していて、人の命を軽んじる藤邦のやり方を嫌悪していた。
だから、彼女が家督を継いですぐにその人体実験を中止させたのだろう。
「そのこと?……人体実験は悲劇しか生まない。だから、止めさせた……それじゃあ納得しない?」
「納得できません!我々は人のすることではないと罵られながらも実験を行ってきた!実験の成功が世の中の平和に繋がるのだと信じて!」
「……平和?人の命を無駄にして出来た平和なんて私は認めない」
アリスさんの声は、目は冷たかった。
いつもの飄々としている姿からは感じることない雰囲気。
それはやはり名家の跡取りと言えるに相応しいほど凛としていて、威厳の感じられるものだった。
「アリス様!貴女は──」
「加賀井室長!」
アリスさんに掴みかかろうとする研究員を後から駆けつけた二人の男女が止める。
男の研究員から羽交い締めにされて、加賀井と呼ばれた研究員は彼女から引き離された。
そして、女の研究員が深く頭を下げてきた。