雪と断罪とそして、紅
すると、才暉の飼う猫がスリスリと腕にすり寄ってきた。
スコティッシュフォールドの垂れ耳のオス猫。
「あ、チェシャ。何処にいたの?」
チェシャと付けられたその猫を撫でてやると、チェシャはゴロゴロと喉を鳴らす。
チェシャ……か……。
「チェシャ……。……アリス、幸せになれて良かったな……」
才暉はさっきの酔っ払った様子とは裏腹に、少し悲しそうな顔をする。
アリスは愛した人を二人亡くしてる。
でも、夫になった和泉はあの二人の分まで……いや、それ以上にアリスを愛してる。
アリスも幸せそうに笑っている。
彼女の結婚式はもう十年以上前の話だけど、今でも鮮明に覚えてる。
白無垢に身を包んだアリスは誰よりも綺麗で、幸せそうに笑っていた。
和真や小鳥遊君も……朱鷺もその姿を見たかっただろうに……。