雪と断罪とそして、紅
「し、凌。《それ》ってもしかして、あの一之瀬叶花?」
小鳥遊君は顔を引きつらせながら寿永隊長に声をかける。
一之瀬って日本有数の名家の一つだよね?
ってことはそこのご令嬢!?
「ああ、そうらしい」
「え、昔と全然違くない?だって、昔はぽっちゃり体──」
「江君♪……余計なこと言わないで良いよ」
叶花と呼ばれた女の子に睨まれて、小鳥遊君は顔を青ざめて口を閉じる。
あのあまのじゃくの小鳥遊君がこんな風になるなんて……。
「それより、叶花。婚約者なんて誰が決めた?」
「えー、あたしだよー」
何というか、凄いな、この人。
すると、叶花と呼ばれた女の子の視線が私へ向けられる。
「貴女、誰?」
「は、初めまして。私、寿永隊長の補佐官をしております浅井紅緒と申します」
頭を下げると、頭の上から盛大な舌打ちが聞こえた。