雪と断罪とそして、紅
「また女の子の補佐官!?菖ちゃんが死んだっていうからあたしがなろうと思って、アメリカから帰ってきたのに!」
舌打ちの上、小鳥遊さんの死を弔うつもりのないような言い方にカチンと来た。
それは小鳥遊君も同じだったようで、叶花さんに掴みかかろうとしているのを紅斗に止められていた。
「凌君!あたしね、貴方の補佐官になるために飛び級で向こうの大学を卒業してきたの。菖ちゃんやあの子なんかよりあたしの方が──」
「貴女は何様のつもりですか?」
それを言った自分の声とは思えないくらい低い声だった。
「何様って一之瀬財閥の一人娘、一之瀬叶花よ?」
そんなことを聞いている訳じゃない。
私が言いたいのは──。
「貴女は小鳥遊さんの何を知ってるんですか?あの人は最期まで寿永隊長の為にと働いていた。それを貴女は知っていますか?」
「知らないわよ。あたしはアメリカにいたんだもの」
「だったら、知ったような口で『なんか』なんて言わないでください!」
私を馬鹿にするのは構わない。
でも、あれだけ寿永隊長に尽くしてきた人を馬鹿にするような言い方は許さない。
私が彼女を睨み付けると、寿永隊長は楽しそうに肩を揺らしながら笑った。
「ククク……」
「し、凌君!?この子何なの!?あたしを馬鹿にして……」
顔を真っ赤にする叶花さんを無視して寿永隊長は私の方へ歩いてくると、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。