雪と断罪とそして、紅
振り返れば、そこには物凄い剣幕の叶花さんがいた。
私、彼女に殺されるかも……。
そう錯覚してしまうほどの形相だった。
私はすぐに視線を元に戻すと、顔に嫌な汗が伝うのを感じた。
本当に殺されそう……。
背中に突き刺さる視線に、本当に背中をナイフで刺されているかのような痛みを感じる。
「浅井……紅緒さん……だったっけ?」
いきなり名前を呼ばれて、私は反射的に振り返って敬礼する。
「う、うす!私は浅井紅緒っす!」
気が動転して、体育会系の挨拶をしてしまう。
後ろから紅斗と小鳥遊君の笑い声が聞こえたけど、今はそれどころじゃない。
あぁー、絶対殺される……。
そう思っていると彼女はにっこりと笑って、私に近付いてきた。
「さっきはごめんなさい。あたし、嫉妬深くて……」
嫌な予感しかしていなかったのに、彼女の口から発せられたのは謝罪の言葉だった。
まさかのことに、私の顔は恐らくアホみたいな顔をしているだろう。