雪と断罪とそして、紅
ディスプレイには≪寿永操≫の名前があり、俺は電話に出た。
「もしもし?」
前なら嫌だった母さんの声も今では何とも思わない。
何故、あれだけ嫌っていたのか不思議なくらいだ。
『仕事中にごめんなさいね。寿永の今後に関わることだから貴方に相談しないとと思って』
「寿永の今後?」
『ええ。一之瀬財閥が正式に寿永の配下に入りたいと申し出てきたの』
一之瀬財閥?
その名前を聞くだけで苛立つが、企業としては大手だ。
寿永とは企業の分野が違うからパーティーとかでは会うものの、あまり関わりはなかった。
「……母さんはどう思う?」
『私は良いと思うわ。寿永とは違う分野の企業だから新しいものを取り入れられる。……ただ、問題があるのよね』
電話の向こうの母さんが小さく息を吐くのが聞こえた。
「問題?」
「あくまで噂だけど、一之瀬財閥の経営があまり良くないみたいなのよ。あと、社長が一人娘を貴方の嫁にしたいみたいで……」
……叶花が俺の嫁?
そんなの全力で拒否する。