雪と断罪とそして、紅
そこには顔面蒼白の八木沢刑事がいて、わなわなと震えている。
「そこにあるのは全て真実だ。八木沢刑事、あんたはまともな捜査もせずに一之瀬に被害届を出され、浅井がやったことと決めつけた。……あわよくば、一之瀬の恩恵を受けようとしてたんだろう?」
「ち、違っ……」
「残念だが、恩恵を求める相手を間違えたな」
寿永隊長は冷たい目で八木沢刑事を睨むと、私を立たせる。
すると、取調室に目一杯に涙を溜めた叶花さんが弁護士らしき人と共に入ってきた。
「凌君」
叶花さんの頬や体は包帯やガーゼで覆われていて、かなりの大怪我をしているらしい。
私には身に覚えのない彼女の怪我だけど、彼女は私にやられたと言い張るだろう。
叶花さんはフラフラと寿永隊長に近付くと腕の辺りに触れ、彼の手を引く。
「凌君、彼女から離れて。彼女の傍にいたら貴方まであたしみたいに怪我をさせられちゃう……」
でも、寿永隊長は腕に触れる叶花さんの手を払うと、包帯の巻かれた腕を掴んだ。
「い、痛い!」
「痛いのか?本当に?」
彼はスッと目を細めると、彼女の腕に巻かれた包帯をほどいた。