雪と断罪とそして、紅


包帯の外されると痣一つない白い肌が露になる。





更に彼は彼女の頬に貼られたガーゼを剥がし、傷がないことを確認する。





「……とんだ茶番劇だな」





「し、凌君……これには……」





「理由があるって?俺の大切な奴を陥れることにどんな理由があるんだ?」





有無言わせぬ彼の言葉に、叶花さんは唇を噛み締めてうつ向いてしまった。






寿永隊長は私の手を掴むと、取調室を出ようとする。





でも、何かを思い出したのか足を止め、叶花さんの方を見た。






「……寿永を敵に回す覚悟。お前にあったかは知らないが、覚えていろ」





そう言い残して、寿永隊長は私の手を引きながら取調室を後にした。





後ろから叶花さんの泣き声が聞こえたけど私は引き返さない。





それに、今の私には彼の手を振り払えない。





それくらい私には彼の手が、彼の取り戻してくれた居場所が大切だったから──。






「寿永隊長、八木沢刑事達はどうなりますか?」





「あれだけ言われたのに他人の心配か?まあ、キツい処分を与えたいところだが、あの二人は叶花に利用されただけだ。……減給位でどうだ?」





私の手を引きながら歩く彼は私をチラリと見る。








< 198 / 210 >

この作品をシェア

pagetop